私は意を決してドアをノックした。控えめで硬質な音を三度響かせた。だがドアの向うはしんと静まり返ったままである。もう一度ノックしようと思ったが、もし彼女が眠っていたりしたら起こしてしまうのも忍びない。 私は持ち上げた手を下ろすと、そのまま立ち去る事にした。 後ろ髪を引かれつつも何処か安堵した複雑な心持ちで部屋を後にした。