Crypt/地下室

 いくらか通路を進むと突き当たりにドアがあった。他のドアと違い厚い鉄板でできた堅牢なものであるが、何かで引っ掻いたような傷やぶつけたような窪みがある。所々には血がこびり着いたような赤黒い跡もあり、何か不吉なものを予感させる。
  私はおそるおそるドアノブを回したが、ここも施錠されているらしかった。ドア越しに向うの側の気配を窺おうとドアに耳を張り付けてみると、 聞こえてくるのはドアを伝わって低く響く風の音。この先にはさらに通路が続いているということだろう。この地下室はかなり深いもののようである。
 ふと風の音に混じって違う音が聞こえた。いや、音と言うより何かの声のようである。それを確かめようと耳を澄ました私は思わず怖気たった。それは人とも獣ともつかない、地獄の底から響く魔物の唸りか、亡者の慟哭の様に低くそして怨みがましく響く声だった。
 はたして階下には何があるのか・・・? ひとつ言えることは、私の中の理性は先程から警鐘を鳴らし続けているという事。階下に待ち受けるものは私に絶望的な命運しかもたらさないはずだと。

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